セリンとレンカク 2話目
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私はたぶん、モテる方だ。
ヒトの姿を維持出来るようになり、ナワバリバトルに参加するようになると、ボーイたちから声を掛けられるようになった。
ご飯の誘い、別の日に遊ぼう、今夜予定ある?など……。誘われるのが当たり前だと思っていたから、他のガールから「そんなに誘われない」と聞いたとき、モテているのか、と思った。
誘いは全て断った。ナワバリバトルで連勝するために他の選手の動きを研究したかったし、練習もしたかったから……。誰かの誘いに乗っていたら、違うジンセイだったかも。
一、二年もすると、ボーイたちは私の体を見ていると感じた。同年代のガールよりも発育が良かったから、目立っていたかもしれない。
そんな自分のカラダが好きではなかったのだけど、体型をあまり気にしないようになれたのは、友人のリンのおかげ。
リンは一人でバーを切り盛りしているイカガールで、バンカラマッチを観戦している時に知った。強くて綺麗で、優しそうなガール。思い切って話しかけてみたら愛想も良くて、すぐに仲良くなれた。
まあ、負けず嫌いの戦闘狂バトルずきだと分かって、とんでもないヒトと仲良くなってしまった、と思っているのだけど。
「ヒトは見た目でヒトを判断するのよ。少なくともセリンはヒトを惹きつける見た目をしているってことだわ」
「でもヤリモクのボーイとか気持ち悪い。私、そんなに尻軽に見えるのかしら」
「彼らはそんなこと考えてないわよ。ただ"良いガール"がいるから誘ってるだけ。私がボーイだったら、セリンのこと好きになって、お友達から始めませんかって言ってるかも。大丈夫よ、もしキモいヤツに絡まれたら言ってちょうだい。私がそいつの手足と股間を潰してあげるわ」
「それは、気持ちだけ受け取っておくわね……。でも、そうね。少し潔癖すぎるのかも。ありがとう、リン」
……と、いう会話をしたあと、色々考えたの。ヒトは第一印象が大事というけれど、本当に最初に得る情報は見た目なのよね。例え声や喋り方だけを知っていても、見た目で萎えた、なんて話はよく聞くし。
私はどう見えていたかしら。目を合わせないように俯いて、笑わないようにして、無愛想にして……。
私が私じゃないみたい。本当の私はもう少し堂々としていて、前を向いているのに。
カラダのことは好きになった訳ではないけれど、ひとつのブキとして扱えるように……そんな気持ちでいられたら、と思えた。
そして本当にブキとして使う日が来てしまった。
使った相手は今隣で寝ているレンカク。先日恋人になったイカボーイ。
悪くない見た目のボーイが仕事バイトのノウハウを教えてくれるということで、胸くらいなら揉ませてもいいか、と思ってしまった。一応、色々天秤に掛けたのよ。そしたら胸なんて安いもんだと思えて……普段ならあんな提案に乗らない。
そして、気付いたら好きになっていた。
絶対に純粋な恋心ではない。気持ちよくなれるのが良くて、それが終わってしまうのが嫌だった。だから本当は好きじゃないのかもしれない。
でもレンカクに好きと言われると嬉しくて、レンカクが他のガールと話してると少しだけ嫉妬してしまうの。
好きなのか、ただの独占欲なのか……。
「……」
レンカクの家でご飯を食べ、少しゲームをした後、泊まって行かないかと言われたので、こうして一緒に寝ている。
エッチはしなかった。しても良かったんだけど、何となく言い出せず、レンカクもしようと言ってこなかった。でもその方が"私"自身を求められてる気がして、少しだけ嬉しい。カラダだけじゃないんだと思える。
すやすやと眠るレンカクの頬を摘んで軽く引っ張ってみる。あんまり伸びないな、と思い自分の頬を摘んでみたけど、私もそんなに伸びなかった。